糖尿病

血液中に存在するブドウ糖を「血糖」といいます。血糖は、体内でエネルギー源として利用されたり、脂肪として蓄積されたりします。血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)は通常、空腹時で70~110mg/dlの範囲にあります。食後はこの血糖値が上昇し、120~140mg/dl程度に達します。そして、2~3時間後には空腹時のレベルに戻ります。血糖値が正常な範囲を超えて上昇し、血糖値の状態が維持する病気が「糖尿病」です。糖尿病は、すい臓から分泌される、「インスリン」というホルモンの分泌や作用の異常によって引き起こされます。インスリンは、血液中のブドウ糖の濃度を調節する働きをしていますが、インスリンの分泌や作用に異常があると、血液中のブドウ糖が円滑に処理されなくなり、血糖値が基準値の範囲を超えた状態が続きます。糖尿病は、発症の仕組みにより大きく二つに分けられます。


①インスリンの絶対的な不足


インスリンを分泌するすい臓のベータ細胞自体が強い損傷を受け、インスリンが分泌されなくなり、絶対量が不足してしまいます。この場合には、体の外からインスリンを補わないと、生命を維持することができなくなります。このタイプの糖尿病は、「インスリン依存型糖尿病」といい、子供や若い人に発病するケースが多いようです。


②インスリンの分泌異常と作用低下


インスリンが分泌されてはいるものの、働きが悪く、その作用が末梢組織で十分に発揮されないような状態(インスリン抵抗性)になり、糖尿病を引き起こします。これは、肥満などが原因で起こり、「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれます。中高年に起こる糖尿病の大部分はこのタイプです。


特に、中高年に多いインスリン非依存型糖尿病の場合、「軽症糖尿病」の状態から、やがて、明らかに高血糖の状態が続いている「顕性糖尿病」へという経過をたどります。


●軽症糖尿病期


この時期の血糖値は、空腹時が110㎎/dl以上、食後を含む随時血糖が200㎎/dl以上の血糖値を示すようになります。このとき体の中で起こっている特徴的な変化は、末梢組織におけるインスリン抵抗性と、これに対するインスリンの過剰な分泌です。末梢組織でのインスリンの働きが悪く、ブドウ糖が円滑に処理されないため、すい臓がインスリンの分泌量を増やして、ブドウ糖を処理しようとします。そのため、インスリンが過剰に分泌されるようになります。加えて、「肥満、軽度の高血圧、高脂血症、低HDLコレステロール血症」などの合併もみられやすくなります。これらはみな、動脈硬化を促進させる危険因子として知られています。動脈硬化を促進させる条件がそろうこうした状態は、「シンドロームX」とか「死の四重奏」と呼ばれ、動脈硬化による重篤な病気を呼び寄せる、大変危険な状態とされています。


●顕性糖尿病期


軽症糖尿病を放置しておくと、やがて空腹時血糖値が140㎎/dl以上、食後を含む随時血糖が200㎎/dl以上の高血糖を示すようになります。この時期には、明らかにインスリンの分泌量が不足してきます。これは、軽症糖尿病期にインスリンを過剰に分泌してきたため、すい臓のβ細胞が疲れ果ててしまうためです。また、高血糖状態が持続していると、ブドウ糖がたんぱく質成分と結びつく〝糖化現象〟が促進され、末梢組織細胞での機能的ならびに器質的な異常を来すようになります。さらに、ブドウ糖は「ソルビトール」という物質に変えられ、細胞内に溜まるようになります。ソルビトールが溜まった細胞は、浸透圧の関係で周囲の水分を吸収しやすくなり、細胞が水ぶくれ状態になります。こうなると、細胞自体が酸欠状態になり、働きが弱くなってしまいます。こうした細胞の異常から、全身の血管や神経に障害が現われ、「目の網膜症、腎症、神経障害」など、糖尿病に特有とされるさまざまな合併症が引き起こされます。


●糖尿病性網膜症


糖尿病の合併症のなかでも、比較的早い段階から起こるのが目の病気です。糖尿病によって起こる病気には、水晶体が濁る「白内障」がありますが、これはそれほど多くなく、手術をすれば治癒します。最も多いのは、失明につながることがある「網膜症」です。自覚症状がないままに進行し、また、視力が低下してきたことに気がついても、“年のせいだろう”などと考え、目の異常を見逃してしまいがちです。その結果、ある日突然大出血や網膜剥離を起こし、失明の危機に直面するということがあります。治療が困難で失明に至る目の病気のなかで現在最も多いのが、「糖尿病網膜症」です。治療しなければ失明するような重症の糖尿病網膜症は、年間に少なくとも一万眼に起こっていると推定されます。糖尿病網膜症で失明する人は、20年ほど前はあまりいませんでしたが、糖尿病の罹患率が上昇するにつれて増え続けています。特に問題になるのは、働き盛りの年代で失明する人が多くなったことです。この病気の初期は自覚症状に乏しく、気が付いた時には重症というケースが多いため、予防や早期発見が重要です。


糖尿病になるとなぜ網膜が障害されるのか、その具体的なメカニズムが最近かなりわかってきました。網膜には、細かい血管が網の目のように張り巡らされています。糖尿病になって血液中のブドウ糖が多くなると、酸素を運ぶ役目を持つ赤血球中の「ヘモグロビン」という物質とブドウ糖が結合して、酸素を運ぶ効率が悪くなります。その結果、網膜の血管が酸素欠乏症の状態になるので、血管はできるだけ多くの酸素を取り入れようとして拡張します。拡張して弱くなった血管からは、血中成分が滲み出てくるようになります。進行すると血管が潰れたり、血管の走り方が変わるなどの変化も起きてきます。


●神経障害


糖尿病の合併症のなかで、最も発生頻度の高いのが神経障害です。神経障害を来たすと「手足のしびれや疼痛」をはじめとして、全身にさまざまな症状が現われます。一般に、神経障害の自覚症状はほかの合併症よりも早く現われてきます。なかには神経障害がきっかけで、糖尿病と診断される患者さんもいます。逆に、糖尿病が進行して神経障害があっても、それに気が付かないこともあります。こうした場合では、治療を開始して血糖値が下がったとたんに、急に痛みやしびれが現われてくることがあります。


●糖尿病性腎症


腎臓には血液をろ過して、体に不要なものを「尿」として排泄する働きがあります。血液をろ過するのが、腎臓の「糸球体」というところです。糸球体は、多くの毛細血管が球状に集まってます。この糸球体の毛細血管が、糖尿病による高血糖のために障害されるのが「糖尿病性腎症」です。糖尿病性腎症が起こるメカニズムには、大きく分けて二つのことが考えられます。一つは、糸球体の毛細血管が圧迫されて起こる「血流障害」です。糸球体の毛細血管の周辺にある「メサンギウム細胞」があり、毛細血管を固定する支持組織としての役割をするとともに、物質の分解や産生も行っています。(代謝)糖尿病によって高血糖の状態が続くと、メサンギウム細胞に多量のブドウ糖が流れ込んで代謝異常が起こり、ブドウ糖とたんぱく質が結合した「糖たんぱく」の産生が促進されるようになります。なぜ、こうした代謝異常が起こるかははっきりとわかってません。糖たんぱくが増えることによって、メサンギウム基質が肥大し、周囲の毛細血管を圧迫するようになります。その結果、毛細血管が圧迫されて狭くなり、血液の流れが悪くなります。そのため、血液をろ過する機能が低下し、腎臓に障害が起こるのです。もう一つは、糸球体の毛細血管の「血管壁の異常」です。毛細血管の血管壁はフィルターのような働きをしており、血液中の不要な成分は血管壁の外へろ過され、最終的には尿となります。ところが、高血糖によって血管壁が肥厚すると、フィルターの「目」が粗くなってきます。そのため、たんぱくなどの体に必要な成分までもが漏れ出し、尿中に排出される(たんぱく尿)ようになります。


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