パーキンソン病

パーキンソン病は脳内のドパミン作動性神経細胞が変性してドパミンが不足し、運動症状、非運動症状を示す神経変性疾患の1つです。 安静時に手足、顎がふるえる。手足を膝や床に置いた状態で出現する規則正しいリズムのふるえで、意識して手足を動かそうとすると、少なくとも一瞬は止まるのが特徴です。そのため、食事や書字、楽器の演奏などには不自由を感じないといいますが、周囲の目を気にする人もいます。安静時に手足や顎の筋肉をたえず動かしているため、疲労がたまります。


筋肉の緊張が活発になり四肢の関節や首を屈伸させたり回転させたりすると抵抗を感じます。 動作がゆっくり小さくなることと、動きが乏しくなり、仮面様顔貌、小刻みに歩行、前傾姿勢、小字症、小声症、すくみ足などが特徴です。 方向転換のときなどにバランスをとることが難しくバランスを崩します。 便秘などの消化器症状、起立性低血圧、食後性低血圧、発汗過多、脂膏性顔貌、排尿障害、勃起不全などがあり、不安、うつ症状、精神症候、認知障害を合併することがあります。


パーキンソン病以外の変性疾患、薬剤、脳血管障害などにより、二次性にパーキンソン症候群と呼びます


パーキンソン病は日本では人口10万人あたり100~150人の患者さんが推定されています。パーキンソン病は年齢と共に発病率が高まるため、人口の高齢化と共にその患者数は増加すると推定されています。発病は50~65歳に多いとされ、男女で発病率に差はないとされています。パーキンソン病は遺伝的素因の関与も少なくなく、特に40歳以下で発症する患者さんについては、遺伝的素因が強く働いていることが推定されます。一方で60歳を超えて発症する患者さんについては遺伝的素因の関与は少ないと考えられています。


パーキンソン病の原因は中脳黒質緻密層のドパミン作動性神経の変性・脱落です。この中脳黒質のドパミン作動性神経は、大脳基底核の運動回路において直接路と間接路を形成していると考えられています。直接路は運動の促進に働いていると考えられ、ドパミンD1受容体が関与しており、ドパミンは興奮性に作用していると考えられます。 間接路は運動の抑制に働いていると考えられ、ドパミンD2受容体が関与しており、ドパミンは抑制性に働いていると考えられます。パーキンソン病ではドパミン作動性神経が脱落するため、直接路は(興奮性の作用が低下し)相対的に機能低下の状態となり、間接路は(抑制性の作用が低下し)相対的に機能亢進の状態となります。その双方の結果として淡蒼球内節・黒質網様部から視床への抑制作用が強まり、このことがパーキンソン病の中核症状の1つである寡動につながるものと考えられています。また淡蒼球内節・黒質網様部からの出力は中脳歩行誘発野や脚橋被蓋核にも作用するとされ、それがパーキンソン病の歩行障害や筋緊張亢進などに関与していると考えられています。


パーキンソン病においてレビー小体は黒質ドパミン産生細胞だけでなく、大脳皮質、マイネルト基底核、迷走神経背側運動核、青斑核、縫線核などにも出現し、ドパミン作動性神経以外にノルアドレナリン作動性神経、セロトニン作動性神経、コリン作動性神経などの変性も伴い、これらの変性によりパーキンソン病に高い確率で合併するうつ症状、認知症、自律神経障害などが生じるものと考えられています。


パーキンソン病は振戦・固縮・寡動・姿勢反射障害の4つの特徴的な症状があり、振戦(手や足の震えが安静時に目立つようになる)はパーキンソン病の初発症状としてもっとも頻度が高く規則的な安静時振戦であり、動作を行うことによって目立たなくなります。また振戦は多くの場合左右差があります。また、例えば右上肢の振戦で発症した症例では、次に右下肢の振戦が生じ、ついで左上肢→左下肢といった順番にすすむことが普通で、N字型あるいは逆N字型の進行と表現される進行形式をとります。


固縮(からだが固くなる)は、歯車様固縮(歯車がかみあうようなガクガクと断続的な抵抗)を認めることが多くなります。


寡動(動作が遅くなる)は、表情は乏しくなり仮面様顔貌で声は小さく書体も小さくなり、また歩行では腕の振りが小さくなり、歩幅も小さく遅くなり、最初の1歩がなかなか前にでないすくみ足現象が起こります。


姿勢反射障害(体のバランスが悪くなる)については、立った時に前屈姿勢になり、後方に引っ張った時にうまくバランスが取れず数歩後ずさりしてしまったり、あるいはそれでもがんばりきれず後方に倒れこんだりしてしまう現象です。


これらの運動症状の他に、パーキンソン病では様々な非運動症状が合併することが知られています。非運動症状としては認知機能障害、幻覚、妄想、うつ症状、アパシー、衝動制御障害、ドパミン調節障害、レム睡眠行動障害、レストレスレッグス症候群、広範囲の自律神経障害(起立性低血圧、排尿障害、便秘、性機能障害など)などが知られています。


パーキンソン病における認知機能障害については、以前は伴わないものとされてきましたが、薬物療法の発展による改善により、近年、発症後12年で60%、20年で80%とする研究が発表されています。パーキンソン病あるいはレビー小体病理を共有するレビー小体型認知症では、幻覚とくに幻視の頻度が高いことが特徴的です。うつ症状については、評価よってもかわりますが、およそ10~30%のパーキンソン病患者さんに認められるとされています。 頻尿・尿失禁などの排尿障害も50%以上の患者さんに認められる症状であるとされ、また便秘も非常に多いとされます。


診断はパーキンソン病の特徴的な固縮・振戦・寡動・姿勢反射障害などの症状が、抗パーキンソン病薬によって十分に改善される場合にパーキンソン病と診断されます。 検査はMRIやCTで特異的な異常所見がないことがパーキンソン病の特徴であり。このため検査は除外診断として進んでいくことが多く。血液検査ではとくに異常は見られません。 パーキンソン病以外のパーキンソン症候群に分類される病気でも、多系統萎縮症や進行性核上性麻痺などでは病初期には部分的にせよ抗パーキンソン病薬に反応性があるとされ、髄液検査では、初期のパーキンソン病ではアミロイドβ、タウ、α-シヌクレインなどのタンパク質が低下することが報告されています。


パーキンソン病以外にもパーキンソン病症状のある疾患は複数あります。


  • 進行性核上性麻痺:病初期からの易転倒性や嚥下障害などを特徴とします。振戦はあまり目立たず、左右差がなく四肢よりも体幹に目立つ固縮が典型的であり、進行すると頸部後屈が目立つようになります。核上性麻痺の名が示す通り、典型的には核上性の垂直性眼球運動障害や仮性球麻痺が認められ、L-ドパに対する反応は病初期に限られ、かつ効果も限定的とされます。また皮質下性と形容される認知機能障害が起こります。

  • 大脳皮質基底核変性症:左右差の目立つパーキンソン症状や失認・失行といった症状が特徴です。他人の手のように感じる(他人の手徴候)なども認められることがあり、不随意運動は振戦よりもミオクローヌス(筋肉が急速かつ不規則に収縮する不随意運動)が目立つことが多いです。

  • 多系統萎縮症:小脳性運動失調、パーキンソン症状、自律神経障害を主体とし様々な神経系統の変性を特徴とする疾患です。小脳性運動失調を主体とするMSA-Cとパーキンソン症状を主体とするMSA-Pの2型に分類されますが、日本では小脳性運動失調が主体のMSA-Cが多数を占めます。

  • レビー小体型認知症・認知障害を伴うパーキンソン病:レビー小体型認知症はパーキンソン病では中脳黒質を中心に認められるレビー小体が大脳皮質にも広範囲に認められ、臨床的には幻視を中心とした幻覚や運動症状を伴う認知症を主体とする疾患です。パーキンソン病も高い確率で認知症を合併します。

  • 血管性パーキンソニズム:基底核の多発性小梗塞や出血などで生じるもので、安静時振戦が少ない、固縮は鉛管様固縮が多い、症状は下肢に目立つことが多いです。

  • 正常圧水頭症:認知症、歩行障害、尿失禁を主な特徴とする疾患です。固縮など明確な錐体外路症状が合併する頻度は高くないですが、姿勢反射障害、歩行障害が目立つ場合や固縮が合併する場合には診断が必要となります。

  • パーキンソン病の初期治療は薬物治療が基本となります。パーキンソン病には運動症状と非運動症状があり、初期には運動症状に対する薬物療法が主体となります。進行すると様々な非運動症状に対する対症療法が必要となってきます また運動症状に対する治療においてもwering off現象(L-ドパの効果が短くなって次の服薬の前に薬効が切れる現象)やジスキネジア(手足や肩などが勝手に動く不随意運動)が問題となってきます。 運動症状に対する主な抗パーキンソン病薬は1、L-ドパ、ドパミンアゴニスト、COMT阻害薬、MAOB阻害薬、アマンタジン、抗コリン薬、ドロキシドパ、ゾニサミド、イストラデフィリンなどがあります。


    非運動症状に対する主な抗パーキンソン病薬は認知機能障害にはコリンエステラーゼ阻害薬のドネペジル・リバスチグミンなどがあり、その他薬物治療に伴う薬物性のものもあり薬物治療中に生じた幻覚・妄想、うつ、衝動制御障害・ドパミン調節障害、起立性低血圧・排尿障害・便秘などには現在の薬を中止・減量したり、それぞれの症状に合わせて併用・調整する必要があります。


    パーキンソン病では、高頻度で骨折がみられます。姿勢反応障害に伴う転倒や症状の変動時に伴う転倒により骨折が起こりやすいのですが、骨折はさらに体を動かさないことによる骨の廃用症候群によってもおこいやすくなります。



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