慢性肝炎

慢性肝炎は、B型やC型の肝炎ウイルスによって、肝臓の細胞が徐々に壊されていく病気です。ほとんど自覚症状がないまま、ウイルスが肝臓内に増殖し、炎症が持続的に進行します。そして、やがて肝硬変に移行したり、肝臓がんに進行する危険があります。炎症は肝臓全体に広がるため、肝臓のさまざまな場所に、がんが発生する可能性があります。


  • B型肝炎
  • 肝臓の病気の多くは、ウイルスが原因で起こります。ウイルスによって、肝臓に炎症が生じ、肝細胞が破壊される病気を総称して「ウイルス性肝炎」といいます。肝炎を引き起こす肝臓ウイルスは、現在、5種類発見されていますが、そのうち「B型肝炎」の原因となるのが「B型肝炎ウイルス」です。B型肝炎ウイルスは、血液が直接体内に入ることによって感染します。そのため、日常生活では感染することは、まずありません。過去には、輸血による感染がありましたが、検査体制が整っている現在では、安全だといえます。性行為による感染もありますが、大人は免疫が発達しているため、ウイルスが体内に侵入しても、急性肝炎を起こしてウイルスは取り除かれ、治癒します。ただ、急性肝炎に気づかない人もたくさんいます。


    問題になるのは、出産時に母親から感染する「母子感染」です。免疫が発達していない赤ちゃんの場合、ウイルスを取り除くことができず、ウイルスがそのまま体内に住み着いてしまいます。この状態を有する人を「キャリア」といい、現在いるキャリアのほとんどは、母子感染によるものです。しかし、1985年からは、母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合、赤ちゃんにワクチンを接種するようになり、現在新たに感染することはほとんどなくなっています。


    キャリアの人が10~30歳代になって免疫の働きが強くなると、ウイルスとの戦いが起こります。これが、急性肝炎です。「だるさ、食欲不振、頭痛」など、風邪と似たような症状が現れますが、約9割の人は3~6ヶ月くらいで自然に治まって、その後肝炎を起こすことはほとんどなくなります。しかし、残りの約1割の人は「慢性肝炎」に移行します。慢性肝炎の経過はさまざまで、長い時間をかけてゆっくり進行する人もいれば、急に重症化して肝硬変になったり、劇症肝炎を起こして命が危ぶまれることもあります。


  • C型肝炎
  • C型肝炎は、B型肝炎と同じように、ウイルスによって起こる肝臓病の一つです。しかし、多くは自然に治るB型肝炎と異なり、C型肝炎ウイルスに感染すると、免疫の発達した大人の場合でも慢性肝炎に移行する頻度は50~70%と高い確率です。現在、日本には100人に1~2人の割合(150~200万人)でC型慢性肝炎の患者さん、あるいは本人も気づいていない持続感染者(肝炎症状のほとんどないキャリア)がいると推定されています。


    一般に、C型肝炎は、ウイルスに感染してから2~3ヶ月で急性肝炎を起こします。しかし、自覚症状は「体が少しだるい、食欲がない」という程度で、黄疸も出にくいため、気がつかない人が大勢います。急性肝炎を起こした人の内、30~40%の人は自然に治りますが、残りの50~70%の人は慢性肝炎となります。 そして、10~15年にわたって、非活動期に入ります。非活動期には、肝機能を表すGPTを測っても正常範囲を示しますが、その間にも、ウイルスは活発に増殖し続けています。そして、活動期に移行し、GPTの値が正常範囲の2~3倍まで上昇してきます。ところが、この場合も、自覚症状はほとんど現れないため、肝炎に気がつかないまま放置していると、慢性肝炎から肝硬変に進行する危険があります。非活動期の間に診断を受け、活動期に移行したら、すぐに治療を始めることが大事です。


    肝炎ウイルスによる細胞傷害はほとんどなく、あっても非常に軽度です。しかし、肝炎ウイルスに感染すると、免疫応答が活性化して、ウイルスの増殖抑制や排除を行います。その結果、ウイルスに感染した肝細胞が破壊されます。肝炎の病態は肝炎ウイルス自体によるものではなく、ウイルスに感染した肝細胞を排除しようとする生体の免疫応答の結果なのです。 肝炎ウイルスに対して、適度な免疫応答が生じた場合は、急性肝炎になってウイルスが排除されます。しかし免疫応答が過剰だと劇症肝炎になり、免疫応答が不十分であったり、ウイルスが免疫応答から逃れる性質を有している場合は、ウイルス感染が持続して慢性肝炎になります。


    C型慢性肝炎の多くは、肝硬変、肝細胞がんへと移行していきます。実際、肝細胞がんの原因の約80%はC型肝炎ウイルス由来であることが知られています。 C型慢性肝炎に対する治療目標の1つは、C型肝炎ウイルスを排除して、肝の線維化(線維化が極めて高度になった状態が肝硬変)の進展と肝細胞がんの発生を抑制することです。 肝の線維化の程度と肝細胞がんの発生率は密接に関係し、治療によってC型肝炎ウイルスが排除できると、線維化は改善され、肝細胞がんの発生率も低下していくことが知られています。


    C型慢性肝炎に対する治療は、ペグインターフェロンとリバビリンによる併用療法が標準治療となっています。 C型肝炎ウイルスが発見されたのは1989年で、日本では1992年からインターフェロンの単独療法が始まりました。C型肝炎ウイルスにはいくつかのタイプがあり、日本人に多いのはジェノタイプ1b型です。 さらに1b型でウイルス量の多いタイプは、日本人のC型肝炎ウイルス感染者の約半数を占めますが治療が難しく、当初、インターフェロン単独療法によるこのタイプのウイルス排除率は約2~5%、つまり100人にインターフェロン治療を行っても2~5人しかウイルスを排除できない状態でした。しかし、2001年にインターフェロンとリバビリンの併用療法が、2004年にはペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が承認されると治療成績は飛躍的に向上し、難治例といわれるジェノタイプ1b型でウイルス量の多い患者さんでも、40~50%はウイルスが排除できるようになりました。それ以外のタイプのC型肝炎ウイルスに感染した患者さんは約90%がウイルスを除去することができるようになっています。 しかし、ジェノタイプ1b型でウイルス量の多い患者さんの約半分は、ウイルスが除去できないのが現状です。そこで、プロテアーゼ阻害剤であるテラプレビルを従来の2薬との併用治療が期待されていますが、ウイルス排除率は良いが、副作用などの問題があります。また、新薬のプロテアーゼ阻害薬のシメプレビルも使用されており他の新薬も開発が進んでいます。


    C型慢性肝炎患者さんは原則的に禁酒であり、肝臓への鉄の過剰な沈着は酸化ストレスの原因となって肝障害を増悪させる可能性がありますので、アルコールの摂取はできるだけ控え、鉄分の過剰摂取も避けるようにしてください。



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