慢性疲労

慢性疲労症候群の疲労・倦怠感は、休息をとって頑張ればなんとかなるものではありません。全身が鉛のように重く、横になっていても激しい疲労・倦怠感を感じるのが慢性疲労症候群です。普通に生活していた人がある日突然原因不明の激しい全身性の疲労・倦怠感に襲われ、それ以降、強烈な疲労・倦怠感と共に微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感、さらには思考力の低下や抑うつなどの精神神経症状が長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなる疾患で、身の回りのこともできずに仕事や学校を休まざるをえなくなったり、家事を行うことができなくなったりします。


慢性疲労症候群の男女比は約1:2で、発症年齢は25~35歳が最も多く、次いで15~25歳、35歳~45歳と働き盛りの若い女性に多い疾患です。


日本における慢性疲労症候群の約3割は、インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなど、ウイルス感染をきっかけに発症しています。また、過重労働や人間関係などの身体的・精神的ストレスが誘因と思われる場合もあります。おそらくウイルスや細菌感染を始めとした種々の環境要因が誘因となって神経系、免疫系、内分泌・代謝系の複合異常が起こり、それが脳の機能に変調を起こしているのではないかと考えられています。


ストレス状態が長期間になることで神経系、免疫系、内分泌・代謝系にひずみが起こります。このひずみによって、たとえば体内に潜んでいるウイルスが再活性化すると、その再活性化を抑えるためにインターフェロンなどの免疫物質が産生されます。こうした反応は生体がもっている防御反応ですが、末梢だけでなく脳のグリア細胞内にも同様の現象がみられることがわかっています。一方インターフェロンはセロトニン・トランスポーターを増強させることが知られていますので、インターフェロンの産生異常が脳のセロトニン代謝になんらかの影響を与え、疲労・痛み・感情をコントロールしている脳の機能が変調し、激しい疲労・倦怠感を引き起こしている可能性が考えられます。また、脳内の慢性炎症が病態と深く関与していることも明らかになりつつあります。


最近の研究では脳が活動するときに通常なんらかの作業を行う場合に脳は一瞬広い範囲が活動しますが、すぐにその作業に必要な脳の範囲を特定して、必要のない神経細胞は活動を停止します。この省エネによって長時間作業を行っても脳はあまり疲れません。慢性疲労症候群では長時間広い範囲の脳を使い続けていることがわかってきました。同じ作業を行っても脳の活動範囲が広いため、疲労が早期に起こります。


もう1つの見方は、末梢におけるエネルギー代謝の異常です。解糖系からクエン酸回路を含めたエネルギー代謝に異常が生じていることが明らかになっています。 慢性疲労症候群では少し動くだけでも激しく疲労する原因が細胞のエネルギー代謝異常にあります。また、抗酸化治療の有効性も示唆しています。このように慢性疲労症候群の病態には中枢神経系の異常だけではなく、末梢における細胞のエネルギー代謝異常も関係しています。


慢性疲労症候群の治療法はまだ確立していません。抗酸化療法と免疫力アップを目指した治療が中心となっています。抗酸化療法ではアスコルビン酸や還元型ユビデカレノン、メチルコバラミンも脳・神経系の機能異常に有効です。 慢性疲労症候群では慢性的な疲労を抱えて生活しているため、さぼっている、なまけていると疑われて肩身の狭い思いをしています。しかし慢性疲労症候群の確定診断に直接結びつくような検査異常はみつかっていません。一般臨床検査では異常が認められないため、内科医からは精神的症状といわれ、精神科の医師には身体化障害あるいは適応障害といわれることも少なくありません。


慢性疲労症候群と漢方へ

医薬品のご購入について