飛蚊症

眼球内の透明な硝子体の中に浮遊性の混濁が網膜にうつり目の前に浮遊しているように見える現象が飛蚊症です。 目の前を点や糸くずのような像がちらつくようになり、見え方はさまざまで、水玉のように見えたり、アメーバ状に見えたり、虫が飛んでいるように見えたりします。 飛蚊症の原因は、治療を必要としない生理的なものと、治療しないと視力が障害される危険性がある病的なものに分けられます。 生理的な飛蚊症には合併症のない後部硝子体剥離と生理的硝子体混濁がありますが、ともに硝子体に生じた浮遊性の混濁が関与しています。


成人の硝子体は眼球容積の約80%を占める透明な組織で、外部からの光が通過する部位としての存在だけでなく、眼球の形態保持や眼球組織を外力から保護する役割を持っています。硝子体は若い時には透明で濁りは少ないですが、加齢に伴って濁りが生じます。その原因はゲル状の成分が減少して液状成分の割合が増加していくからです。 硝子体のゲル状成分は10歳までに成人と同じ体積になりますが、40歳を過ぎると加齢に伴って減少します。一方硝子体の液化は5歳頃から始まり、年々増加して90歳になると硝子体の半分以上が液状成分となります。40歳を過ぎて硝子体のゲル状成分の体積が減少し液化していくと硝子体が徐々に収縮し、ついには硝子体が網膜から剥離します。この生理的現象が飛蚊症の原因となる後部硝子体剥離です。


後部硝子体剥離が起こると硝子体の状態が変化し、硝子体に混濁が生じます。この混濁が硝子体の中を漂うので、微生物や糸くずが動いているように見えます。 後部硝子体剥離は男性と比べて女性ではより若い時に発症しやすく、また近視が強いほど発症年齢は低いといわれています。生理的硝子体混濁は後部硝子体剥離と無関係に若年者に生じるもので、硝子体の液化に伴う線維性混濁や残存する硝子体動脈が原因と考えられています。50歳未満の飛蚊症の66%を占め、近視の方に発症しやすいといわれています。


合併症を伴わない後部硝子体剥離や生理的硝子体混濁が原因の飛蚊症は病的なものではなく、加齢に伴う生理的現象なので、特に治療の必要はない場合がほとんどです。しかし、飛蚊症が気になって日常生活が障害されている場合もあります。 現在のところ飛蚊症に対する有効な薬剤はなく、硝子体の混濁を除去するためには硝子体手術しか治療法はありません。


飛蚊症の原因が病的な場合には、適切な治療が必要となります。病気が原因となる飛蚊症は、飛蚊症全体の1%ほどですが、あるとき突然に起こるのが特徴です。症状が現れ始めた日や時刻を覚えているほど、普段とは明らかに違う症状が急に現れます。後部硝子体剥離が起こるとき、網膜が硝子体に引っ張られて網膜に裂孔が生じることがあります。網膜が引っ張られるときに、光が点滅するように感じられる「光視症」という症状が現れることもあります。網膜裂孔を放置しておくと、網膜の破れた部分から網膜の裏側に水分が入り込み、網膜がしだいにはがれていきます。これが「網膜剥離」です。裂孔ができてから網膜剥離が始まるまでの時間や、網膜のはがれる面積は、列孔の大きさや位置によって異なります。眼球の上のほうで剥離が起きた場合(視野の下側が欠ける)には、重力の関係で比較的早く網膜がはがれてきます。突然起こる飛蚊症は、網膜剥離の前ぶれになっていることがあるので、なるべく早期に受診することが大切です。網膜剥離が起きてしまうと、はがれた部分では物を見ることができないため、視野の一部が欠けて暗くなります。また、網膜の中央にある黄斑部がはがれた場合には、著しく視力が低下します。


網膜裂孔に伴って硝子体に出血が生じることがありますが、糖尿病、高血圧、外傷なども硝子体出血の原因となります。出血が少ない場合は飛蚊症と自覚されることもありますが、出血が多いと目の前に墨が流れたようになりまったく見えなくなることもあります。最初は飛蚊症と思っても日に日に影が濃くなるようであれば硝子体出血の可能性もあります。糖尿病網膜症では、網膜に伸びてきた病的な新生血管が破れ、硝子体に強い出血が起こることもあります。


このような生理的に起こる飛蚊症は、本人にとっては気になるものですが、効果的な治療法がありません。病的な飛蚊症でないことがはっきりしている場合には、あまり心配はありません。視界の点も、見えるときと見えないときがあるのが普通で、自然に見えなくなることもあります。




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