ADHD

ADHD(注意欠陥多動性障害)は広汎性発達障害(PDD)や学習障害(LD)と共に発達障害と呼ばれています。発達障害とは脳機能の極めて軽度な発達上の障害で、以前は親の躾や本人の性格が原因と考える人も少なくありませんでしたが、今では脳の認知機能に問題があるため、さまざまな症状を呈していることが明らかになっています。そこで、家族や周囲の人が発達障害の本質を知って適切な支援を行うことが求められています。


ADHDの主症状は不注意、多動性、衝動性で、これらの症状が7歳以前からみられ、6ケ月以上続き、複数の場面でたびたび観察され、社会面や学業面で著しい障害が認められることを付帯条件とし、広汎性発達障害、統合失調症、うつ病などを除くと定められています。注意力、欲求、感情を自分自身でコントロールする能力が十分に身についておらず、自己中心的な行動が幼児期から持続している状態がADHDです。


ADHDは決して少なくなく、日本における学童期の発症率は3~5%と言われていますので、1クラスに1~2人はADHDのが学童がいることになります。これまでADHDの中では多動性と衝動性が目立つタイプ(多動性・衝動性優勢型)が最も多いと考えられていました。しかし最近、不注意が強いタイプ(不注意優勢型)のほうが潜在的に多いことが明らかになってきましたので、実際の発症率は5%より多いと考えられます。一方、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待による2次障害としてADHD様行動障害が生じやす いことも明らかになってきたため、診断にあたってはこの点に注意することが重要です。


発達障害のうちADHDは薬物治療が有効です。具体的にはドーパミンおよびノルアドレナリンを増す薬が有効です。そこで、ADHDの病態を生化学的にみるとドーパミン系とノルアドレナリン系の機能低下といえます。また、解剖学的には前頭前野(前頭連合野)、線条体、小脳の機能低下、認知神経心理学的には遂行機能、ワーキングメモリー、報酬系、時間感覚、さらに感情を内に秘める能力が障害されていると考えられています。


遂行機能とは、物事を計画してやり遂げることで、その際にワーキングメモリーが重要な役割を果たします。ワーキングメモリーとは、今見たことや聞いたことを記憶して(初期記憶)、過去の記憶と関連付けて考えるスペースですが、ADHDではその容量が少ないため、物事を順番に行うことが難しくなります。報酬系の障害とは、少し我慢して待てばより多くの報酬が得られるのに、目の前の報酬に飛びつくことです。時間感覚の障害とは、一定の時間内にどれだけのことができるかが把握できないことで、たとえば15分しかないのに、その間に1時間かかる作業を詰め込んで遅刻するようなことが起こります。


これらはTriple Pathwayの障害と呼ばれていますが、最近、Default mode networkの障害も注目されています。私たちは、何もしていない時には頭の中でさまざまなことを考えていますが、集中して何かを行う時にはこのネットワークを閉じます。しかし、ADHDではなにかを行う時に余計なことを考え、静かにしなければならない時に周囲の出来事が気になるのです。こうした現象をDefault mode networkの障害と呼びます。


ADHDの治療には行動療法と薬物治療があります。ADHDは生涯にわたる障害で、加齢によって症状も変化していきます。社会的環境もADHDの辛さに大きく影響します。特に学ぶべきことが多岐にわたる小児期は最も辛い時期です。そこで、この一番辛い時期に薬物治療と行動療法によって生活の質を上げて、あまり辛い思い出を残さないようにすることが非常に大切だと思います。成人になったら、ADHDとしての特性を生かせる職業を選ぶことで前向きに生きて行くことができると考えます。



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